夏の風物詩
ここは三番隊の隊長室。
ここの窓から花火が見えるのだ。
屋根だと暑いしそれに比べてここは隊長室だけあって空調設備が整っている。
「へー、そのためにボクんとこ来たんか?」
笑うギン。
「いいじゃない差し入れ持ってきてあげたんだから!」
ふくれる乱菊。
隊長と副隊長なうえ所属する隊も違うが二人はいわば恋人な関係にあった。
まだキス止まりだったが、それは乱菊が頑なに拒んだためだ(笑)
「ええのん?そない無防備で」
「別に無防備じゃないし、しっかり斬魄刀持ってるし」
つれない態度。
ギンはニタリと笑い窓際に立つ乱菊のもとへ一瞬で移動する、いわゆる瞬歩で。
「力ずくは嫌やねん。でもあんまり油断しとると襲うで」
「ご忠告どうも。襲われる前に斬るから」
「んじゃ斬られる前に襲うしかあらへんなあ」
引きつり笑いの乱菊と満面の笑みのギン。
それを制するように窓の外に花火が上がる。
「わっきれーーい!」
とたんに目を輝かせる。
「ねえギンも見なよ!すごいなー夏の風物詩だよねー」
ギンはぼりぼりと頭を掻く。
なんとなく気が抜けたが、そっと後ろから乱菊を抱きしめる。
「ちょ!?」
「なんや、花火よりボクを見てや」
抱きしめる腕に力が入る。
「ギン?」
振り向こうとすると唇を重ねられた。
「気ぃ抜いたら襲う言うたはずや」
「き、斬るって言ったわ」
「隊長に逆らうんか?」
「・・・そういうのを権力乱用って言うのよ」
「ボクの部屋に来た時点で覚悟できてる思うたのになあ」
それには何も言い返せなかった。
たぶんこういう展開になるだろうと予想はしていたからだ。
「いつまでも、拒んでたらギンが浮気しそうだし」
「なんやーボク一途やし」
「さいですか」
結構マジで言ったはずなのに軽く流された気がして力が抜けた。
こんな時間にこの部屋に来たのはまさに自殺故意。
この勇気をわかって欲しかったのだがこの男には無理な話か。
「怖いん?」
「・・・まあ、ね」
「ボクそない怖い?」
「まぁあんたは色んな意味で怖いわね」
「傷つくわ〜ずっと死ぬ気で我慢しとってん」
抱きしめる腕に力が入る。
「せやから今夜はもう・・・逃がさへんで」
ひょいと抱き上げられた。
「きゃ!?」
「やさしゅうできひんかもしれん」
そのままベッドに下ろされた。
手を固く握られたまま唇を唇でふさがれる。
いつもとは違い熱いキス。
「・・・愛しとるよ、乱菊」
「・・・ギン・・・」
再び重なり合う唇。
窓の外では花火が輝いていた。
完
あとがき
シリアスにするつもりだったのにただのバカップルに。
続きは是非妄想してください(逃)
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