私だけの王子様
いつものように荒地で木の実を探していた乱菊。
待ち伏せるように見知らぬ男が三人、近づいていることに気付けなかった。
「やあお嬢ちゃん、かわいいね」
「君なら絶対こんな所よりいい暮らしができるぜえ」
「一緒においでよ」
黒い服に黒いサングラス、人売りの類だと一瞬で悟った。
ここでは大人なんてめったに見かけないし比較的中が良かった友達は次々と姿を消していた。
その理由が今わかったような気がする。
「・・・あたしは行かない。すでに市丸って人に仕えてるの」
腕を取ろうとした男が一瞬驚いたように手を止めたが、すぐに皮肉な笑みに変わった。
「ここには大人は居ないとすでに調査済みだよ、嘘はいけないなあ嘘は」
笑いながら腕をつかまれる。
「いや!放して!」
男たちはゲラゲラと笑いあった。
「大人しくしてれば危害は加えないよ。大事な君は高・・・いやきっと優遇されるから」
グイッと引っ張られる。
「いやーーー!!」
ザン。
音がして目を上げるとそこにはギンが立っていた。
手には木刀を持っている。
「はあ、だから反対やったんや乱菊の一人外出」
「・・・ギン」
男たちは完璧に倒れている。
「・・・死んでるの?」
「まさか、さすがに木刀じゃよう殺されへんわ。それより無事か乱菊?」
にっこりと笑うギンの周りには倒れたまま動かない大人が三体。
「あ、あたしは大丈夫だけど・・・ほんと?この人たち死んでないよね?」
震えが止まらないのはこの男たちに脅えていたためか、それとも・・・。
「ん?どした乱菊?」
「・・・あ、足が震えて・・・立てない」
いったいどこでそんな剣技を覚えたの?
「あーしゃーないなあー、ほれ、おぶったる」
こんなにやさしいあんたのどこにそんな力が?
「あ、ありがと・・・その、大丈夫なの?」
「ん、ボク結構力あるんやで。乱菊の一人や二人軽いもんや」
たまにふといなくなるのはこのため?
誰かに腕を買われたの?
「・・・あたしはまた、一人になるの?」
ギンの背中に呟いていた。
「乱菊?どないしたん?」
「ううん、何でもない。助けてくれてありがとね」
「・・・・・たとえボクがおらんなっても」
急にギンが呟いた。
よいしょと背負いなおす。
「ボクがおらんなっても、乱菊は強うならなあかんよ。
でも怖い目にあったりとか何かあったら僕を呼び、どこへでも駆けつけたるから」
「・・・ふふ、ギンはまるで王子様みたいね」
「あはは、そしたら乱菊はお姫様やな。助けなあかんやろそれは」
ねえギン・・・。
お姫様はちゃんとつかまえててね。
どんなに時が経っても二人に何があっても、
ずっと、つかまえててね。
あとがき
ラブラブにはならなかったですがギンの愛を感じ取ってください。
かなり両想いですよ<主張>
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