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『京!!』
あっ治くん!?
私は再びぱっと目を開けた。
目の前には見慣れた家の天井と、
そして周りをとり囲むように家族のみんなが私を覗き込んでいた。
「うわっ」
総勢5人(と一匹)の視線に私はかなりびっくりして思わずのけぞる。
「な、何事??」
「み、京ぉぉぉぉぉ〜!良かった目を覚ました〜」
「え?え?」
お母さんとお姉ちゃんたちが抱き合って泣き出した。
「京っ!おまえ・・・心配したじゃないか・・・っ」
お兄ちゃんまで目に涙をためている。
「良かった・・・ああ、良かった・・・」
お父さんは全身の力が抜けたような顔をしてただ頷いている。
な、なんなのこの状況は・・・?
「・・・京さん」
すぐ耳元で声がした。
見るとポロモンが神妙な表情で私を見つめていた。
「信じていましたが・・・やはり恐かったです・・・」
「え?」
「あなたはずっと、意識不明のままだったんですよ・・・」
意識、不明?
あ、そうだったんだ・・・
だからみんなこんなに取り乱して、
こんなに今、ホッとしてくれてるんだ・・・
私はなんだか申し訳ない気持ちと、くすぐったい気持ちでいっぱいになった。
「みんな・・・ごめんね心配かけて」
「・・・ううん、いいのよ。あなたが無事でいてくれただけでお母さんは大満足。
それにね、お礼なら隣のぬいぐるみちゃんにいいなさい。ずっと看病しててくれたんだから」
その言葉に私ははっとしてポロモンを見る。
「ポ、ポロモン・・・?もしかして、もうみんなポロモンのこと・・・」
「デジモン、だろ?わかってるって」
「お兄ちゃん・・・」
「・・・もう私の正体なんて、この際どうでもいいことでしたからね。
あなたのことが、何よりも先決なんです」「ポロモン・・・」
ああ、もう。
みんなして私の涙腺を緩めるようなこと言うんだから。
おかげで涙がでてきちゃったじゃない。
夢の中で、散々泣いたっていうのに・・・
「おいおい、泣くなよ」
・・・同じ台詞。
お兄ちゃんのその台詞が、治くんの台詞と重なって
なんだかますます泣けてきた。
「う、うわ〜んっもうみんな、ありがとぉ〜っ!!」
私は本気で嬉しくて感動して大声でお礼を言ったっていうのに、
みんなは一瞬顔を見合わせた後、どっと笑い出した。
「あははは!ホント、京らしいお礼の言い方ね〜」
お姉ちゃんたちなんて泣きながら笑ってる。
も、もうっ、そんな器用な笑い方しなくたって・・・
ムゥっと頬を膨らませてみたが、すぐに顔が緩んでしまう。
なんだかスゴク幸せな気持ち。
私は枕もとのポロモンを抱き上げて、ぎゅっと抱きしめた。
「ありがとね、ポロモン」
「みっ京さん・・・っ」
あ、赤くなった。
私はクスッと笑って、みんなの方を見た。
「ありがとうお父さんお母さんお兄ちゃんお姉ちゃん。ミヤコ、復活デス!」
ちょっと照れくさいから、ポロモンを天高くかかげてみた。
それが原因でまた笑いの渦が巻き起こったりしたんだけど。
―ねえ、治くん。
私が強くなれたのはきっと、
家族や友達、そして照れ屋のパートナーくんのおかげなんだよ。
でもね。
あなたの存在は大きいってこと、凄く感じるの。
笑えない自分なんて、やっぱりイヤだもの。
これからもずっと自分の感情に素直な私でいたい。
あの時、あなたが私のためにしてくれたことで、
少なくとも幸せだと感じられる今がある。
もし笑えない私のままだったとしたら、一体どんな未来が待っていたのかな?
あなたはきっとそれがわかっていたから、行動してくれたんだよね。
『まあね』
かすかに響いてきた声。
きっとそれは幻聴じゃない。
私はすうっと息を吸い込んだ。
そして思いっきり叫んでやったの。
「大っ好きだからねーーーーー!!」
過去形じゃないよ。
今だって、これからだって、ずっと大好きでいてやる!
それが治くんへの仕返し。
ファーストキスを奪ったあなたへの、
仕返しなんだからね。
END
あとがき 長い!?あれおかしいなーこんなハズでは・・・ |