土井はどさっと長椅子に倒れこんだ。
一年生は実習で山奥の村に来ていて、その村には野球場があるのだ。
土井は生徒につき合わされもうヘトヘトだった。
「お疲れだねぇ土井先生」
優雅にお茶をすすっているのは途中で姿をくらませた山田伝蔵だった。
「いやーまだまだ若いですなぁあの子らに付き合えるとは」
あんたが逃げたから私が全員の面倒を見る羽目になったんじゃないか・・・とは言えない。
「もう死にそうですよ」
「こりゃ重症ですな、ああもう少しでさんが来るらしいですよ」
「くんが!?」
死者復活。
がばっと起き上がった。
「怪我人が出たときのための応急処置用の道具をそろえてくるようですよ・・・ははーん」
山田が意味深な表情を向ける。
「な、何ですか」
「いえね、可愛いしいい子だとは思いますがバックにあの大木先生がいますぞ」
「私は別に・・・」
「別になんですか?まだ何も言っとりませんよ」
「うっ」
心配しているようで楽しんでいる。
余裕顔の山田は恋愛経験が乏しいと思われる土井に優越感を持った。
「私が教えて差し上げましょうか?女性を虜にする方法」
けっこうです、と言われると思っていたが意外にのってきた。
やはり妻帯者だからか。
「おほん、まずはねえ・・・」
話しかけたところで噂のが現れた。
「誰も怪我してないー?あ、山田先生と土井先生」
「や、やあ、くん」
「あれ、土井先生顔が赤いですよ?熱でもあるんじゃ・・・」
手を額に当てられてさらに赤くなる。
「いや、あの、その・・・」
山田はくっくっと笑ってさりげなく席をはずした。
店広しと言えども今は二人きり、しかも額に手が置かれているため非常に至近距離だ。
「も、もうわかったかい、熱はないよ」
「んーみたいですね、良かった」
にっこりと微笑むを見てますます赤面する土井。
「くんも、その、泊まるのかい?」
普通を装って聞いてみる。
「もちろん。は組の部屋で寝る予定です」
「え!私は見回り係なんだが・・・そうか、じゃあは組の部屋は覗かないことにするよ」
「いいですよ、私のことは気にしないでください」
「う・・・ん」
こっちは気にするんだが。
「それにしてもいい天気ですね。これぞ合宿日和って奴ですね」
ひょいと土井の隣に座り込む。
野球を楽しむ生徒たちの声が聞こえる。
ここは野球場から少し離れた宿屋の一角。
土井も座ったが訪れた静寂は彼をちょこっと緊張させた。
やがて肩に重みを感じて見てみるとが肩にもたれてスヤスヤと眠っていた。
「!・・・やばいな、こんな所で寝たら風邪を引いてしまう」
その姿に緊張しつつ、起こさないようにそっと抱き上げた。
柔らかな髪がこぼれ落ちる。
「・・・綺麗だな」
小さく呟いて、吸い込まれるようにキスを落とした。
うーんと眉を動かしたため起こしてしまったかと慌てたが、
そのまま寝息をたて始めたので土井はほっと胸をなでおろした。
「まるで悪人だな私は」
苦笑し、何も知らないまま眠り続けるを寝床に運ぶのだった。
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あとがき
うーん、エロに走りかけました。
ていうか書きました(白状)
あぶねー