追われる薬士









ドクタケに足りないのは薬の先生だ!
ということで、あれよあれよという間に捕らわれてしまった

ここはドクタケ城の一室。
最初は地下牢に入れられるはずだったが薬士をそんな扱いにするとはけしからん!
という自身の意見でこんな結構な待遇を受けていうるのだ。


「やあやあ君が新しく来たお医者さんですかー」


現れたのは怪しい袴をはいたグラサンの男。


「…あなたは?」

「私は魔界之小路と言います、あなたの教育係です」

「見張り役ってこと?」

「んーそんなに警戒しないでください。
私はドクタケの忍びですが一教師ですし女性を傷つけてりしませんから」


言ってることは紳士的でまともなのだが異様な袴が全てを台無しにしている。
呆れたように見ると何を勘違いしたのか男は赤くなった。


「だだだ大丈夫ですよ私が絶対にお守りしますから!」


言うや否やいきなり口をふさがれた。


「ややっこれはいけない!誰か来ます!」


鋭い眼光で(サングラスでわからないが)背後を一睨みすると、土井半助がごく普通に顔を出した。


「なーんだ土井先生じゃないですか」


敵であるはずなのにとたんに親しげな表情になる。
土井も殺気など微塵も出していない。


「あ、魔界之小路先生?すいませんがうちのを返してくれませんかねえ?」


どことなく遠慮がちに言う土井。
互いに敵と認識していないのは良くわかるが、自分が捕らえられたという事実はいかがなものか。

その時、どやどやとドクタケの忍たま三人組がなだれ込んで来た。


「あーーっダメですよ土井先生!!」

「魔界之小路先生にようやく春が来たんですよー!」

しゃんは返せないわ!」


騒ぐドクたまたちに動揺する魔界之小路。
土井もその迫力に押され気味だったが当のはのほほんとして眺めていた。
まるで他人事のように。


「うーん…うちとしても医者は必要だからなあ」

「忍術学園には新野先生というりっぱなお医者さんがいるじゃないですかー!」


食い下がるドクたま。


「あはは、ですが彼女がいると忍たまたちの士気が上がるんですよ」

「…てゆーか土井先生が個人的にさんを取られたくないんでしょう」


しぶ鬼がため息混じりに言い捨てる。
土井が慌てて否定しようとするもこの三人組の前では空振りに終わってしまうし、あながち間違いでもない。


「怪我をしたらこの薬草をすりつぶして塗るといいわ。ごめんね私やっぱり帰らなきゃ」

しゃん…」


はちらっと土井の方を見て苦笑する。


「わざわざ迎えに来てくれたみたいだしね」


にこっと笑いあう。
その様子を見て唯一の女ドクたまは悟った。
きっと二人は離れてはいけないんだと、女のカンがそう言っている。


「ふう、やはり戻られるのですね」

「はい、でもいつでも呼んで下さい。病人に敵も味方もありませんよ」


帰ろうとすると魔界之小路に腕をつかまれた。


「…何か?」

「いえ八宝菜には逃げたと伝えておきます。…また来てくださいね」


照れたように言う魔界之小路の腕を外して間に土井が立ちはだかった。


「彼女はまだ見習いです。今度さらうなら新野先生にしろと八宝菜に伝えてください」


穏やかな物言いだったが、
二人の男から火花が飛び交うのが見えたと言う。









あとがき

てかこれ魔→●⇔土井じゃね?
魔界之小路先生好きなんですけど私が書くと片思い突っ走リ状態になります。
げふん。