月夜
「寝てしまうなんて・・・なんだか文次郎に怒られそう」
「そんなことで怒るほど小さい男じゃないぜ」
「!!」
返ってきた声にビックリして窓を見る。
「も、文次郎!?」
「窓開けっ放しで寝るとは無用心にも程があるぜ。まあおかげで寝顔は拝めたわけだが」
口をパクパクさせるにいつもの意地悪っぽい笑みを向ける。
「なんだ、それとも襲われるのご希望だったか?」
「っばか!ばかばかばか文次郎のばかーーーっ」
「ば、ばかばか言うな!お前のあのボギャブラリーに満ちた悪口はどこに行っ・・・」
飛んできた枕をキャッチしたとたんが抱きついてきた。
「な・・・」
「無事でよかった」
「・・・」
照れたように頭をかくと、慣れない手つきで抱きしめ返してきた。
「心配かけたようだな・・・すまん」
「でも、仕事は?」
「この俺が失敗すると思うか?」
「そっか・・・また会えなくなるんだ」
「・・・」
文次郎は答えなかった。
わかっている、忍びを愛するとはそういうこと。
自分も忍びだが女だ。女というだけで城は雇ってはくれない。
だから共に戦うこともできない。
「私はこのままここに残る、保健医を目指すわ」
「俺はしばらく実線を積む。そしてきっとこの学園に戻り長を目指す。だからそれまで・・・」
ぐいっと顔を持ち上げられた。
「待ってろとは言わん、だがもし生きて帰れることがあればその時はここにいろよ問答無用で連れ去ってやる」
そしてキス。
息ができないくらい強いものだった。
手が腰紐に回されびくっとなる。そのまま押し倒された。
「も、文次郎?」
何と言われてもここで何もしなければ男が廃る。
再び舌を絡めとる。
隙間風が冷たい夜だった。