黄色いアイツ
2222HIT御礼






ふわふわの玉子が食欲をそそるオムライス。
その素敵に黄色い物が今、銀時の目の前で湯気を放っていた。


「・・・え?」

「え?じゃない。オムライスは嫌いか?これで何かを描くのが我が家のしきたりじゃ」


月詠が片手にケチャップを持ち、冷たく見下ろしている。


「いや、むしろ大好きだけれども・・・何これおまえが作ったの?」

「まあ」


ここは月詠の家、正確には日輪と晴太の家だ。
日輪仕込みの月詠の料理の腕前はそれなりに定評がある。
日輪に誘われてここに来た銀時は遠慮なく昼飯を馳走になる意気込みだったが、
てっきり日輪が作るものだとばかり思っていた。
だからエプロンをつけて現れた月詠にカルチャーショックを受けたのだ。


「おまえ・・・意外と女らしいことするよな」

「な、なんだ悪いか?」

「いや?むしろいいねえ、そんな月詠が俺は好きだぜ」


さらりと甘い言葉を吐く男。


「・・・よく恥ずかしげもなくそういうセリフを吐けるな」


皿を置き、立ち去ろうとした月詠の手をつかむ。


「逃げんな。俺が真っ昼間からこの家に来たのは日輪に頼まれたからってわけじゃねえ、おまえに会うためだ」

「・・・」

「パチンコ我慢して来てやってんだ感謝されることはあっても非難される覚えはねえな」

「黙れただめし食らいが。所詮、昼飯に釣られて来た口じゃろ」

「どんだけ信用ねーの俺・・・まあ確かにただめしには釣られたが、おまえの手作りだと知ってりゃ飛んでくるのにな」


とたんに腕を振り払い、頬を赤く染める月詠。


「だから、よく、そんなセリフを吐けるな・・・」

「おまえも早く理解しろよな俺は捕まえた女にゃどこまでも付きまとうストーカーよりたちの悪い男よ」


軽やかにケチャップを奪い取る。


「さて、何て書いて欲しい?」


ニヤリと笑う男からそれを奪い返す。


「もう良い、わっちが書く!」


目にも止まらぬ速さで掻かれたのは”白髪ハゲ”の一言だった。


「・・・オムライスに実にふさわしくねえっていうか俺は白髪でもハゲでもねえ!」


勢い良くその文字をスプーンで消し去り、そのまま一すくいする。


「ほら責任とって食えよ」


強引に月詠の口元に差し出す。


「や、やめぬか!わっちの分もちゃんとありんす!」

「いいから黙って食わされろ!」


どういう日本語じゃ!?と文句を言うと開いた口に容赦なくそれを詰め込まれた。


「うぐっ」

「おまえが先に毒見しろーおまえが作ったんだしな。どうだ、うまいか?」

「・・・うまいに決まっておるじゃろう、わっちが作ったのだからな」


仕方なくもぐもぐと噛み始める。
するといきなり銀時が吹き出した。


「くく、ついてるぜ米粒」

「な、ぬしがきちんと口に入れんからだ!」


慌てて拭おうとすると手をつかまれた。


「んな取り乱すな俺が取ってやるから」

「悪いな・・・」


ひょいと指で取ったかと思うとそれを当然のように口に入れる。


「んーいい味付けだ」

「あ、当たり前だ・・・わ、わっちが作ったと言っておる・・・」


顔が赤くなる。
その様子を見て銀時が口の端を上げる。


「もしかしなくても照れてんじゃね?」

「ほ、ほざけ照れてなどおらん!日輪が部屋におるから運んでくる!」


立ち上がる月詠をやる気なさげに目で追う。


「今度俺を呼ぶときは日輪がいない時にしろーまあいつでも飛んできますがね?」


からかうように笑っていたが、それは嬉しい言葉だった。
月詠は思わず立ち止まり苦笑する。


「ありがとうな・・・」


相手に聞こえるか聞こえないかの小さな呟き。
だが彼には聞こえていたらしい。

銀時はスプーンをくわえたまま、月詠の背中に軽く手を上げた。










あとがき

2222HIT記念。お題「」ラブラブな銀月」

なんだか銀→月?ラブラブになってたらいいなあ(遠い目)
日輪さんが自室にこもっているのはこいつらのためです。
晴太は例のバイトで不在ですよー
オホホホ状況は良好なんですがねー・・・