焼き芋ラプソディ









「なぜ焼き芋・・・」

「秋だから、つーか何でいるのおまえ」

「たわけ、ここはわっちの家(正確には日輪の家)じゃ。それはこっちのせりフじゃ」

「俺は木の葉を燃やせる広い土地を探していたあげく、この家の庭に辿り着いただけだ」


さも当たり前のように芋の焼け具合を確かめる銀時。
晴太はバイトで不在、日輪は部屋にいるが用事があるとかで出てこようとしない(策略)
二人で芋を焼いて何が楽しいのか・・・月詠はキセルをふかせた。


「おまえ焼き芋食ったことねーだろ」


ポツリと銀時が呟いた。


「まあな、サツマイモといえば芋あん、それ以外は食べたことも無ければ調理法も知らぬ」

「天ぷらの王道じゃねーか」

「天ぷらといえば山菜じゃ」

「・・・・・・」

「なんじゃその憐れみに満ちた目は」

「いやこんなに甘くてうまいもんを知らなかったとはな、おっと焼けたか?」

「これが、焼き芋・・・」


渡された物をしげしげと見つめた。


「まあ物は試しだ食ってみろ」

「・・・大丈夫なのか?」

「焼き芋を知らねーおまえが大丈夫か」

「吉原には焚き火の習慣は無いし鳳仙から与えられた物しか口にしなかったからなあ、
幼い頃から天ぷらや刺身やフグ鍋しか知りんせん。甘味といえば落雁くらいか」   *落雁(らくがん)・・・現代ではよく仏壇に供えられる砂糖菓子。 

「・・・・・なんか腹立つ」


銀時はひきつりつつ、がぶりと皮ごと芋に食らいついた。
それを見て月詠も手元の芋を見つめる。


「もう少し冷えねば皮が剥けん」

「このお嬢様が。仕方ねえ俺が剥いてやるから貸しやがれ」


奪い取られる。
あぢーっと騒ぎながらも器用に剥いていく様はさすがというか似合うというか。


「ほれ、剥けたぞ」

「あ、ああ・・・すまんな」


戸惑いつつも大人しく受け取る。
その姿は死神太夫というよりもただの異文化に触れてビビる子供のようで。
つい微笑んでしまった。


「な、何を笑っておるんじゃ!?」


キッと睨むが頬が赤いのでそれがまた面白い。


「ぶふっ、悪ィ悪ィ・・・やっぱおまえ可愛いな」

「「はあ!?」

「いいじゃねーかそう騒ぐなー俺たちゃそういう仲じゃーん?」

「いつ、そういう仲になった!?」

「嫌か?」

「う・・・べ、別に嫌ではないが・・・」


にまっと笑う銀時。


「俺ぁこーゆーの苦手なんだよ」

「うあっ」


いきなり顎をつかまれて体が強張る。


「・・・苦手だが、言わなきゃたぶん永久に伝わらねーんだろう」


至近距離な銀時の目に真剣な光が宿る。


「おまえが好きだぜ・・・月詠」

「・・・」

「あれ、返事は??」

「う、あ、わっちも・・・じゃ」


わかっておるくせに!とは言えない。
とても言える空気ではない。

彼はただ優しく微笑んだ。


「おまえが拒んでも俺ぁおまえを守るからな」


ゆっくりと重なる唇。
初めてのそのキスは、彼らしく素朴な味がした。









あとがき

素朴な味=焼き芋味です。
初キスが焼き芋味って・・・
銀さんだから許される気がします。愛は盲目。