「う〜ん・・・」

「・・・気がついたか?」


なんだか暖かかった。
どうやらタオルケットらしきものが掛けられているらしい。
ハーマイオニーはソファーで寝ていた。


「な・・・なんでここにスネイプ先生がいらっしゃるんですか?」


ぼんやりと質問するとぎろりと睨まれた。


「ここは我輩の部屋だが」

「え!?」


びっくりして飛び起きると見慣れない部屋だった。
そう、研究室でもなくまぎれもない生活感あふれる部屋だった。


「あ」

「理解したかね?」

「ここが先生のお部屋なんですか?」

「まあな。他人を入れるのは校長以来だ」


すっとカップが差し出される。


「飲め。温まる」


それはコーヒーではなかった。
白い飲み物・・・ホットミルクだろうか。
口にしてみて少し驚いた。それはおそらく甘酒というものだろう。
酒と言っても濃度は低いと思われる。


「珍しいものですね」


おいしいです、と言いつつあっという間に飲み干してしまった。


「我輩には弱すぎる。酒の癖に甘いと言うのも腹立たしい」


ちょっと吹き出してしまった。そういえば甘いものは苦手だと言っていたっけ。
ハーマイオニーはタオルケットを剥いだ。
耳に違和感を感じて触ってみた。
ふわふわと毛深い。毛深い!?
ばっと姿見を覗くとそこに猫耳な自分が映し出された。
頭から生えている可愛い感じではなく耳自体が猫の耳になっている感じだった。
腰の下からは長い尻尾が出ている。しかも真っ黒なのだ。


「こ、これは!」

「・・・おまえとあのクソ猫が合体した成れの果てだ」

「ジジです!ってゆーかこんななりじゃ明日授業でられません!」


わっとなきだす少女にスネイプは非常に慌てた。


「な、泣くな!泣かれるのは苦手なのだ嫌いなのだ!」

「授業にでられないなんてあんまりだわー!」


勉強好きの彼女にとって授業は生きがいと言ってもいいほど大切なものだった。
泣き止まない少女をスネイプはタオルケットで覆うと言う荒療治にでた。


「泣くんじゃない!耳が毛深かろうが尻尾があろうがおまえはおまえだグレンジャー!」

「ひっく・・・本当に、そう、思います?」

「ああ・・・」


むしろ尻尾はなにやらいやらしいぞ、とは言えない。


「我輩の不注意もあるからな。分離する方法は校長が知っている」

「ダンブルドア校長が?」


何故?と聞く寸前、コンコンとドアをノックするのが聞こえてきた。
びくっとするハーマイオニーとは対照的にスネイプはいたって冷静だった。


「・・・誰だ?」

「わしじゃ。ダンブルドアじゃ」


ガチャリとドアをあける。


「何の御用ですか?」

「冷たいのう。わしの力が必要なのじゃろう?」

「・・・なんでもお見通しなわけですか」


ふいにダンブルドアが視線を奥に移した。
その目に入り込んできたのは猫と同化したハーマイオニーの姿だった。


「ふむ、あれはあれで可愛いもんじゃのう」

「校長・・・ふざけてないで全てお見通しならはやく元に戻してくれませんかね」

「セブルスよ、すまんな。わしの力では元に戻せんのじゃよ」

「な!話が違うじゃないですか!」

「わしは方法を知っていると言っただけだ」

「そういうのを屁理屈というのです!あなたは昔からそうだ!そんなに我輩が気に食わないのなら辞めさせればいいものを!」

「興奮するなセブルスよ。わしには無理だがおまえには出来ることじゃ」

「・・・なんですと?」


スネイプは固まった。
ダンブルドアにできなことを自分が出来る。それはとてつもなくすごいことに思えた。
ダンブルドアは長い白髭を撫で下ろす。
その目はどこか得意げだった。


「彼女の思い人のキスで全て解決じゃ!」


神々しいまでに輝いている学校長の前で再び固まる。


「え・・・」

「そしてその思い人とはセブルス、おまえのことじゃ」

「はあ?」


まぬけな返事しか返せない。


「わしはこういう恋もありだと思うがくれぐれもマクゴガナル先生に勘付かれないようにな」


あれは頭が硬いのじゃ、と言い残し軽い足取りで去っていくダンブルドア。
ドア前で硬直しているスネイプに黒猫耳なハーマイオニーがそっと近づく。


「先生?」

「・・・」

「今のってダンブルドア校長だったのでは?」


どうやら今のやり取りは彼女の耳に入ってないらしい。
しかし今のやり取りを説明するのはいかなるものか。

そしてはたと気付く。
猫の聴力は凄まじいものだったと。
今のハーマイオニーにはその力が備わってるはずだ。


「・・・きこえていたはずだ」

「え・・・・・」

「つまらない演技をするな・・・聞こえていたんだな?」

「・・・・・はい」


ふぅとスネイプはため息をついた。


「気にするな、校長の戯言だ」

「私は・・・先生のことが、好きですよ?」

「そんなことを言っても減点は取り消さんぞ」

「そんなつもりでは!信じてくださらなくてもいいです、でも私の気持ちを伝えることが出来たのは校長のおかげです」

「・・・」

「私はグリフィンドール生です。でもスネイプ先生が好きなんです。
これはいけないことなのかもしれません。で・・・っ!」


言いかけて言葉は途切れた。
突然、強い力で抱き寄せられたからだ。


「・・・もういい、わかった」

「先生・・・」

「いいのか我輩は意地が悪いぞ?」

「私も小生意気な小娘です」

「男の部屋でそんな告白をするとは・・・どこまでもバカな小娘だ」

「その小娘を抱いているのは誰ですか?」

「・・・そういう発言は良くないな。勘違いするやからもいるのだ」

「気にしません。先生は気にするんですか?」

「ん?いや・・・」


抱きしめているこの状況では何を言っても卑猥に聞こえる。
向こうは覚悟を決めてこの部屋に留まっているのかもしれない。
決断できないでいるのは自分のほうではないのか。
自分のほうが何倍も年を食っていると言うのに・・・


「情けないな・・・」

「え?」


スネイプは黒耳なハーマイオニーを抱き上げた。


「きゃっ」


不意打ちに持ち上げられて小さく悲鳴を発する。
尻尾が勝手にスネイプの手に絡みつく。
それを優しく撫でた。


「あ、んぅっ」

「・・・感じるのか?」


意外な反応にすこし驚く。
ハーマイオニーは真っ赤になって


「そういうこと言わないでください!」


と反論するが涙目なので男には逆効果だ(なにがやねん)


「・・・電気、消してくださいね」

「ああ」


ベッドに置きランプを吹き消すと同時にスネイプが覆いかぶさる。


「愛しているよ・・・」

「私も、です」


キスが落とされた。
その瞬間まばゆい光とともにハーマイオニーと黒猫のジジが分離された。
黒猫は闇にまぎれて見えなくなった。


「良かったな明日何の問題もなく授業に出られるぞ」

「そう・・ひゃっ」


ローブの中に手が侵入してきてどきっとする。


「大丈夫だ・・・痕はつけないようにする」

「は、はい」


そんな二人を黒猫はじっと見つめていたという(ちなみにメス猫です)






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この続きを書くと間違いなく裏行きになります。
あぶないあぶない・・・