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「入りたまえ」
「・・・はい」
スネイプに促されてすごすごと足を踏み入れるハーマイオニー。
そこはスネイプの部屋であり、研究室のようでもあった。
「もっとごちゃごちゃしてると思ってました・・・」
神経質なのか並べられた本は全てきっちり棚に納められており、
年号順ですぐ場所がわかるようになっている。
「使い終えたら元の位置に戻す。そんな当たり前のことが出来ないやからが多いようだ」
「私の机の上は本で埋まってますよ。先生のようにうまく片付けられなくて」
「・・・」
何か言い返されるのではと思っていたが、彼は黙っていた。
「・・・怒らないんですか?」
「怒られたいのか?」
「い、いえ・・・」
「我輩の決め事に君を巻き込む気はない」
眉間の皺は相変わらずだったが特に不機嫌ではないようだ。
減点されなくてすむわとハーマイオニーはほっと溜め息をついた。
その時、奥からニャーオという鳴き声が聞こえてきた。暗闇に光る二つの目。
「ずうずうしくも我輩の部屋に居ついた。餌はやっていない。どこかで食っているようなのでな」
そして姿を現したのは細身の黒猫だった。
小柄だからまだ1歳くらいだろう。人間で言うと5歳くらい。
クルックシャンクスという赤猫を飼っていることもあり、ハーマイオニーは無類の猫好きになっていた。
「可愛い!」
思わず駆け寄る。
「女子供は小動物が好きだな」
「あら、そういう先生こそ好きだから飼ってるんでしょう?」
「それは断じて違う!居ついたと言っただろう!?」
スネイプの必死の抵抗を無視して擦り寄ってきた黒猫の頭をなでた。
猫は気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らす。
「・・・君はすごいな。そいつは我輩以外のものに触られるのを極端に拒む。
我輩でも慣れるのに1ヶ月かかったというのに」
「人嫌いの猫なんですね」
「いま我輩と似ているとか考えただろう」
「・・・あ、名前は何て言うんですかっ?」
慌てて話題を変える。
「名は無い。強いて言うならクソ猫とかかね」
それは名じゃないと言いたいのをこらえて笑顔を作る。
「そんな名前だめですよー私がつけます!んージジってどうですか?」
「・・・どこかで聞いたような名だな」
「(何で知ってるの?)とある日本アニメの黒猫の名前です」
「別に好きなように呼びたまえ」
ジジに決定!と嬉しそうに猫を抱き上げた。
ペッタリとしてはいるものの気持ちのいい毛並みだった。
「あ、私今にぼし入りクッキー持ってますよ!」
「なぜそんなものを・・・」
「両親がカルシウム対策にと送ってきたんです。丁度いいわ!」
るんるんと猫を抱えたまま鞄を開けるハーマイオニーをスネイプは苦笑気味にみた。
「餌付けする気か」
「そんなたいしたことじゃないですよー渡り歩いてるなら餌付けできませんし」
「・・・コーヒーでも淹れてくる」
「あ、私はハチミツ入りで!」
何かぶつぶつと文句を言いながらキッチンに消えていく男の後姿を見送りながら、
ハーマイオニーはふと見慣れない装置があることに気がついた。
猫を抱いたまま近づいてみるとそれは古いものだった。
”合・・・”とだけ読み取れる。
「なにかしらこれ」
「にゃーん?」
君達を合体させてあげるよ。
と言う声がどこからともなく響いてきた。
そしてまばゆい光に包まれた。
「きゃあ!?」
「何の騒ぎだ?・・・あ、それは」
戻ってきたスネイプは驚きのあまりコーヒーカップを取り落としてしまったようだ。
あたりにするどい壊音が響き渡り、中の液体も散乱した。
「きゃーーーーっ!!」
「グレンジャー!」
あまりの光にスネイプはたじろぐが抱かれた猫は至って冷静だった。
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