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コンコン
「・・・・・入りたまえ」
「失礼しまーす・・・」
ハーマイオニーは恐る恐る足を踏み入れた。
予想通り陰鬱な表情のスネイプがそこにいた。
「おまえか。まさか本当に来るとはな」
「逃げたら減点対象になるでしょう?」
「100点は軽く引いてただろうな」
「むぅ」
スネイプは優雅にコーヒーなど飲んでいる。
気を引き締めないとどんな言葉が降ってくるかわからない。
ちらりと問題の本たちを見てため息をつく。
「ものすごい量ですね」
「これらすべてをあの本棚に移し変えてほしい」
「いたいけな乙女をこんな風にこき使うのはどうかと思いますが・・・」
ぎろっと睨まれて肩をすくめる。
「別にいやなら無理強いはしない。点数を引くだけのこと」
それは恐喝という名の脅しだわ。
ハーマイオニーは心の中で立て付いた。
「先生のほうが力あるし、大人だし、なぜここまで放っておいたんですか?」
「・・・我輩はその本どもに嫌われているようなのでな。マグルの血を引くお前なら奴らも心を開くだろう」
ん?ということは・・・
「始めから・・・私にやらせるつもりだったんですか?」
「さあ、な」
にやりと笑う。
さすがの優等生もこれにはカチンときた。
「ひっどーーい!点数とか減点とか関係ないじゃないですかーっ」
「しぃ!大声を出すんじゃない!」
「あんまりだわーー!どんな思いでここをノックしたとおもっ・・・」
「チッ」
舌打ちが聞こえたかと思うと視界が真っ暗になった。
「・・・・・」
「落ち着いたかね?」
暗闇の正体はスネイプの服だった。
彼の腕の中にハーマイオニーは抱きすくめられていた。
何の香りかわからないが大人独特の香りがした。
「・・・先生は落ちついてるんですね」
「え?」
「女の人を抱くという行為は先生にとって普通なことなんですか?」
「そ、そういう質問は誤解を招くからやめたまえ」
「私は、正直どきどきしてしまいました・・・」
「・・・・・」
ゆっくりと腕から開放された。
しかし二人の位置は近くなっていた。
「・・・飲むか?」
椅子に案内されどうにか落ち着いた様子のハーマイオニー。
淹れたてらしいコーヒーが差し出された。
「いいんですか?いただきます。あ、ハチミツあります?」
無愛想な表情のまま無言でハチミツをとりにいく黒尽くめの男。
眉間にしわを寄せたままどんっとビンを机に置いた。
何かぶちぶちと文句を言っていたがそれはいつものことだ。
コーヒーを淹れてくれてハチミツまでつけてくれるとはいつもの彼からは想像できなかった。
「これで混ぜろ」
「これって・・・実験とかで使われる棒じゃないですか」
ガラス製のそれは明らかにスプーンではない。
「文句を言うな。大丈夫だそれは新しいし害はない」
「・・・はい」
たてつくとろくなことが無いのはわかりきっていたため、しぶしぶそれでかき混ぜる。
「先生は入れないんですか?ハチミツ」
「我輩が甘いものが苦手なことくらい知っておろう」
「あ、だからチョコレートをあんなに頑なに拒んだんですね」
「どうせ食べないなら受け取る必要はない」
きっぱりと言われて何やらわだかまりが吹っ飛んだような気がした。
「・・・さっき抱きしめてました?」
げほっげほっとスネイプはむせた。
「な・・・あれは事故だ」
「そんな2文字で片付けないでください!私は心臓発作で死にかけたんですから!」
「大げさな・・・」
「何が大げさですか!女心をもてあそぶなんて最低です!」
「誤解を招く発言をするな!ばかなゴーストに聞かれるだろう!」
一応ゴーストが勝手に入ってこられないように魔法を張り巡らせているが、大きな声は耳をすましていれば聞こえるかもしれない。
「あっ、ここは学校でしたね」
この部屋には初めて入ったものでと、ハーマイオニーがぺろりと舌を出す。
「はあ、もういい。さっさと掃除を始めてくれ」
「あ、そうでしたね。これ飲み終えたらやります」
「掃除が終わったら・・・どこか好きなところに連れていってやる」
その言葉にハーマイオニーはティーカップを持ったまま止まった。
「ほ・・・本当、ですか?」
「我輩はそんなつまらん嘘はつかん」
むすっとして顔をそむけたが頬が少し赤い気がした。
「嬉しい!私頑張りますね!」
「他の者にはくれぐれも内密に・・・」
「いいませんいいません!先生、絶対ですよ!?」
「ああ」
一人ではしゃぐ彼女をみてスネイプは少し笑った。
それは、いまだかつて誰も見たことのない穏やかな表情だった。
オヤジ臭じゃないです。
絶対に公式になりえませんが好きですねスネハーv
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