手料理
「んーいい匂いだなあ」
いつものようにだらしない格好で、爆発頭を掻きながら何気なく台所を見ると何やら鍋が火にかかっている。
「この匂いは・・・カレーか?」
「当たりじゃ」
急に声がして銀時は飛び上がる。
「つ、月詠!?なんで!?」
「さて、何ででしょう?」
新八が皿にご飯を盛り付けながらにやりと笑う。
神楽は冷蔵庫を開け放ちその冷気で涼んでいる。
いつもなら早く閉めろと一喝するところだったが月詠がいる事に驚いていてそれどころではない。
「月詠さんがね、食事を作りに来てくれたんですよ♪」
これでしばらく玉子かけご飯とお別れできますね!と新八はかなり嬉しそうだ。
「・・・お前、料理できんの?」
「失礼な。これでも日輪のカムロだったのだ。基本的な料理ぐらいできる」
「ツッキーこれできたアルか私大盛りネ!」
神楽が小皿にすくい上げ月詠に渡す。
お妙の殺人的料理を知っているためかうかつに味見しないことにしているのだ。
沖田はタバスコの前科がある。
月詠は味見し、ジャガイモに火が通っていることを確かめると、大量に盛られたご飯にそれをかける。
神楽の目が輝く。
「うまそーアル!久々のちゃんとしたご飯ネ!」
待ちきれずその場で一口食べる。
「うまいー正直期待してなかったけどさすがツッキー、うまいアル!」
今にも感動の涙を流しそうな勢いだ。
「・・・今までどんな食生活を。ひとまずあっちの机で食べなんし」
「月詠さん、僕運びます。銀さんも座っててください」
「いやーそんな偉そうな身分じゃねえし。・・・麦茶でも用意するわ」
頭をぼりぼりとかきながら冷蔵庫に向かう。
ルーをよそう彼女は銀時には眩しく映った。
彼女は銀魂キャラでは珍しくまともな料理ができる女だ。
てゆーかもう嫁決定。
そのつもりのシチュエーションである(神の声)。
月詠はよそい終わると新八に渡し、銀時のほうを振り向いた。
コップを4つ盆に載せたところだった。
「銀時、ぬしは何でも食べられるな?」
「んーまあ好き嫌いはねえよ・・・そんなこと言ってる立場じゃねーし」
「貧乏好き嫌いなし、と言うからの」
「・・・おい俺にツッコミ役やらせる気か?それを言うなら貧乏暇なし、だ」
「たいした違いはない」
「全然違うわ。自分の間違いを認めなさいよ。・・・てか早く食おうぜ腹減ってきた」
皆には昼食だが起きたばかりの銀時には遅い朝食だ。
つまりこれが今流行りの朝カレー。
CMでやってるくらいだからメジャーなのだろう、まあ三食玉子かけご飯の呪縛からは解かれた。
「うまいな」
一口食べて銀時は呟いた。
「カレーとシチューは簡単じゃ誰にでもできる。まあわっちは隠し味にコーヒーミルクを入れるがな」
「誰でも、ね・・・できない奴もいるんじゃね?でもこれはマジでうまいわ。
・・・・・・何してんのお前」
隣の月詠はせかせかと自分のニンジンを銀時の皿に移している。
「き、貴様は緑黄色野菜で栄養を取ったほうが良いと思ってな」
「ありがたいねえって、んなわけねーだろ!ただ嫌いなものを人に押し付けてるだけじゃねーか!」
「ニンジン以外の野菜は食べられるわ!」
「何で強気になるの!?俺だけニンジンカレーみたいになってるじゃねーか!なんだこのニンジン天国!!」
騒ぐ銀時とあくまで冷静な月詠。
その対照的な図に向かいの新八と神楽は目を合わせため息をつくのだった。
*カムロ・・・姉さまに付っきりの世話役。付き人?みたいなもの? なぜか漢字変換できませんでした。