「いやー満腹満腹。あれ、銀さんは?」

「銀ちゃんは用事あるからってどっか行ったネ。ツッキーは忙しそうだったし・・・定春待ってるから私たちは先に帰るアル」


薄情な同居人たちは腹をさすりながら満足気に帰路についた。
神楽は夕方なのでトレードマークの日傘はささない。

一方銀時は店の入り口付近で張り込んでいた。
月詠を待っているのには違いないがあのイケ好かない奴をこらしめてやろうと闘争心モリモリメラメラだった。
もうすぐ夕飯ピークが終わり月詠ときっとあの下心見え見え男も出てくるだろう。

店の中から「お疲れ様でしたー」という声が聞こえてきて予想通りあの男が月詠と並んで出てきた。
銀時は黒いオーラをまといつつ二人の前に現れる。


「あ、銀時?」

「よう、お前が変な男に引っかからねーように待ってたぜ」


すると男が月詠の前に立ちふさがる。


「君は何だい?僕がしっかり彼女を送っていくから君は帰りたまえ」

「ああ?てめーこそさっさと帰って母ちゃんのおっぱいでも飲んでな」


二人の背後に睨みあう虎と熊が見える。
月詠はため息をついた。


「なんかわからんが銀時、ぬしはなぜここにおるんじゃ?」

「お前を待ってたっつったろ。アルバイト初日だから心配だと日輪に頼まれてな」

「それは・・・すまないな」


その言葉をさえぎるように男が銀時の胸ぐらをつかんだ。


「おい白髪、彼氏でないことは彼女から確認済みだ。これ以上つきまとうならストーカーとして警察に通報するぞ」

「触んなボケ。俺はストーカーでも白髪でもねーよハゲ。そうだな、彼氏じゃねえよ旦那だよ」

「な!?」


これには男だけでなく月詠も絶句した。


「こいつは俺の女房だ、色目使ってんじゃねーよクソガキ」


ガキと呼べる図体ではないが(下手すると銀時より背は高いかもしれない)月詠を引っ張り寄せる。


「ぎ、銀時なにを・・・」

「話を合わせろ」

「・・・そうじゃな・・・・・・だ、旦那が迎えに来てくれているのを忘れておった!」


男はため息をついて、銀時をあからさまに無視して月詠を見つめた。


「嫌なことがあったらすぐに僕に言うんだよ。こんな旦那より絶対力になるからさ」

「すまない。でもわっちが愛した旦那は頼りになるぞ、心配はいらぬ」


さらりと言い放つ月詠。
銀時は(内心めっちゃ嬉しかったが顔には出さず)ざまあみゃがれと男をせせら笑う。
出鼻をくじかれた男は舌打ちをする。


「んじゃまた店で会おうね月詠ちゃん」


と、笑顔で去って行った。
残された二人に微妙な空気が流れる。


「・・・あー、なんか嫌な野郎だな」

「そうか?いい人だと思・・・痛っ」


突然デコピンをくらった。


「ちょーっと優しくされたからって絶対野郎と二人きりになるんじゃねーぞ、お前は外見だけは女なんだからな」

「む、なんじゃその言い草は。わっちが心を許すのはぬしだけじゃ!」


叫んで赤くなる。


「ふーん俺って愛されてるなあ♪もう本当に結婚しちゃう?新婚さんいらっしゃいでいちゃつきまくって三枝を椅子ごと転がしちゃう?」


ニヤニヤしながら腰に手を回す。


「は、離せアホ!なんでわざわざ生活能力皆無の男と結婚せねばならんのじゃ!」

「愛があればどんな試練も密の味だ」

「あきらかにわっちだけの試練じゃあ!」

「なぁに〜俺のこと嫌いか?」

「べ、別に嫌いではないが・・・」


うつむく月詠。
この男に惚れているかもしれない事実を思い出す(忘れていた模様)。


「俺は結構あからさまにアピールしてるつもりなんだがお前の気持ちはわからずじまいだ。
このままだと俺ただのストーカーじゃん、嫌よ近藤ゴリラの二の舞は」


しっかりと月詠の腰に手を回したまま見つめてくる。


「・・・言わなきゃわからんのか?」

「あのさ・・・普通は男のセリフだと思うよそれ」

「質問に答えろ」

「はあ、わからねーから聞いてんだよ、男はセンチメンタルなのよ?」


うなだれる銀時を月詠が不意に見上げる。


「・・・わっちはぬしが好きじゃ」

「・・・・・・不覚にもドキッとしたぜ。も一回言ってv」

「嫌じゃボケ・・・」


言い返そうと顔を上げた瞬間、唇を重ねられた。


「・・・」

「本当ならこの延長戦で押し倒したいけど我慢します」

「あ、当たり前じゃ」


真っ赤になる月詠を満足気に抱きしめる銀時だった。







あとがき

場所的に18禁はアウトです。
外な上、店前ですから(笑)
きっとずっと赤かったんでしょうね月詠サンはv



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