固い繋がり






「お、銀時じゃないか久しぶりだなあーあれ、そちらのお嬢さんは?」


商店街を歩いていると声をかけられた。
その声の主は近藤で、銀時は内心で舌打ちをする。
今ちょうど月詠を煙管(キセル)店へ案内しているところだったからだ。
冷やかされること間違いない。
案の定、近藤はにやにやしている。


「わっちは月詠と申す」

「そのしゃべり口は、姉さんもしや花町の人間では?」

「そうだが」

「ほーう美人さんだもんなあー金が無いといつも言っていたのはこの娘子に貢いでいたからか、いや銀時もやるねえ」


多大な勘違いをしているようだが銀時は面倒くさそうにため息をつき、
月詠はただ煙管をふかしていた。


「・・・銀時、知り合いか?」

「ん?まあ・・・ストーカーでゴリラなケダモノ刑事だ」


がちゃ。
言い放った瞬間、手首に手錠がかけられた。


「??」

「侮辱罪&キレーなお姉ちゃん誘拐罪で逮捕だ」


近藤はニヤリとほくそ笑む。


「てめーバカか!さっさと外しやがれ!」


噛み付いたそばからガチャという音が聞こえてきた。
なんと月詠自ら手錠をはめていたのだ。


「・・・え。何やってんのお前?」


月詠は全て無視して手首にしっかりと収まっている手錠を眺める。


「これが犯人の気持ちか。ふむ、大した感慨はないな」


つまらなそうに呟き、さあ外してくれと近藤に手を差し出す。
繋がっているため必然的に銀時の左腕も引っ張られる形になる。


「どうした刑事殿?早く外していただきたいのだが」


当たり前のように言われ、近藤は新たなタバコに火をつけふいーっと煙を吐いた。


「てゆーか鍵無いよ。署にはあるけど常に誰かが持って帰ってるから明日まで待ってくれ」


わははは、とお気楽に笑う。
銀時と月詠は青ざめた。


「ま、まじ!?」

「明日までこのままか・・・?」

「ま、明日なんざすぐだ」


んじゃまたな、と笑いながら去っていく近藤。吸殻をきちんとお持ち帰りしているあたり警察である。
残された二人の手首はしっかりと手錠で繋がっていた。
呆然とする。


「・・・お前が興味本意で手錠かけてみちゃったりするからだぞ!どうすんだコレ!!」

「普通、手錠持ってれば鍵くらい持っておるじゃろう!」

「あの変態ゴリラに普通って言葉は通要しないんだよ!」


ぎゃあぎゃあと言い争いが勃発したが、手が繋がって見えるためにウザイ痴話ゲンカと通りがかる人々に睨まれる。


「ま、待て待て・・・これ以上争っていてもラチが開かねえ」

「・・・だが、このままじゃお互い帰れまい」


悩む月詠を見て銀時は困り果てて頭を掻きむしる。


「今日のところは俺んちに泊まる?明日朝一で署に乗り込むしかないぜ」


うーんと唸る月詠。


「仕方ないな。じゃがわっちは利き手が繋がれている何もできんぞ」

「別に何もしなくていいんじゃね?だが風呂とトイレは我慢しろよ」

「風呂は我慢するが・・・トイレ(小さいほう)は自然現象だからなあ・・・約束はできん」

「俺がそばで見守っててもいいなら好きなだけしていいぜ」

「うむ、その時は気絶してもらう」


涼しい顔の月詠に対し青ざめる銀時。


「まあ、できるだけ我慢するでありんす」

「・・・俺は我慢できない自信がある」

「貴様はそういう男じゃ、それに男の場合は簡単じゃ問題は無い」


言い終わると同時に銀時が手を握り締めてきた。


「あー・・・家に帰り着くまでイチャイチャするぞーてゆーか手錠なんかご近所様に見られるわけにはいかねーし」


ぶっきらぼうに言い捨てるがこちらの目を見ようとしない。


「・・・ぬしの手は熱いな」

「そーか?お前の手が冷たてえだけだ、心と同じだ」



静かなる言い合いが再び起こるが手を繋いでいるため道行く人にはバカップルとしか映らなかった。