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そして布団は並べられた。
「こういう状況だ、隣で寝ることを許してくれよ」
「別に構わん。同じ布団じゃあるまいに、まあ変な動きを見せたら即串刺しじゃが」
爽やかに言う月詠。
「わーってるよ、だが寝る前に寝間着に着替えないといかんだろ。お互い後ろ向きで着替えようぜ。
お前の分は下のババアから借りれた、キャサリンが泊まった時用らしいが」
さすがにババアのは賞味期限切れだろ、とやる気なさげに呟く。
「何から何まで悪・・・」
渡されたものを見て絶句した。
なんと真っピンクのフリフリのネグリジェだったからだ。
「・・・なんだこれは」
「あ?寝間着だよパジャマだよ着物で寝るわけにはいかねーだろ、てか今振り向いたら銀さんのセクシーショット炸裂だが」
「これがパジャマ・・・なんというかわっちの趣味ではないな」
「趣味じゃないとか言ってる場合か、てゆーかもう着替えたの?振り向いてもいい?」
「ああ、簡単な寝間着じゃ。もういいぞ」
やれやれ、とだるそうに振り向き銀時は固まった。
目に飛び込んで来たパジャマは必要以上に露出の多い薄い生地のネグリジェだったからだ。
「嬉しいけどいいんですかそんな格好で・・・てゆーかキャサリンの奴こんなもん着てやがったのか」
引きつる銀時を尻目に、月詠は普通に髪留めを外し始める。
「左手だけとは不自由なもんじゃな。てゆーかぬし、前ボタンを留めていないではないか」
「片手でできねーよ、まあお前のはいろいろ問題があるがボタンが無い分簡単だろうよ」
ボタンの無いネグリジェにしたのはお登勢とキャサリンの気配りであるのだが、二人はそれに気付きもしない。
「仕方の無い男じゃ、わっちが留めてやる」
すっと銀時の上着に手を掛ける。
「・・・なんか俺ら夫婦みたいだな」
「たわけ、貴様のような旦那を持った覚えは無い」
よし終わったぞ、と顔を上げるといきなりキスを落とされた。
それはあまりにも突然の出来事で。
「・・・」
「・・・俺、しっかり男なんですけど」
かっと赤くなる。
「わ、わかっておるわ・・・男は野獣だとわかっておる!」
「いやいや俺野獣じゃないし」
「じゃあ何故・・・こ、このようなことをしたのだ・・・」
だんだんと声量が落ちてくる。
カチャリと手錠が鳴り、ふわりと抱き寄せられた。
「これでもまだ”何故”とか言えるか?」
左手は手錠で繋がれているため右手だけで強く抱きしめる。
「男は野獣か、そーだな俺は好きな女限定で変貌できるぜ・・・お前限定でな」
くっと笑う。
「・・・わっちは・・・」
手錠で繋がれた手を握り返す。
「ん?」
「わっちはぬしが好きじゃ、そばにいたいと思った初めての男じゃ」
「・・・・・そっか」
「誰かを好きになることなどないと、そんな感情はとうの昔に捨て去ったと思っていた。
日輪を守っていくことが使命であり生きる意味であると」
「・・・」
「だがぬしが現れて変わってしまった。
わっちは不覚にもぬしに惚れていた、恋はしないとこの傷に誓ったはずなのに」
言い終えると抱きしめる力が弱まり、代わりに顎を持ち上げられた。
「そんな誓いは無効だクソ食らえだ、言ったろ・・・お前を一人にはしねえと、俺がずっとそばにいてやるよ」
「銀時・・・」
静かに唇が重なった。
いつの間にか銀時の腕が背中に回され、そのまま押し倒されたがここでするわけにはいかない。
いつ新八や神楽が入ってきてもおかしくはない。
「ぎ、銀時。その、今日のところは大人しく布団に入ったほうが・・・」
両手を押さえつけられながら月詠が戸惑うように呟いた。
銀時はちょっと眉をひそめる。
「勿体無えが仕方ない。ってゆーか手錠してるしね」
「いやそれ以前に隣の部屋には神楽たちがいるし」
銀時はため息をつきながら自分の布団に入る。
もちろん繋がっている手は出したままだが、それをぎゅっと握り締める。
「! だ、だめじゃ銀時!見つかったらどうするんじゃ!?」
「別にいいじゃねーか。なんならこっちに来るか?」
にやりと笑う。
「い、行くわけなかろう!やはりケダモノだな!」
ぶわっと赤くなりつつ言い放つ。
おかまいなしでにやけ続ける男。
「冗談だよ今夜はゆっくり寝ろ。
野獣もこんな所で暴れるほど馬鹿じゃない、大人しく寝るからよ」
「そうか・・・?では遠慮なく寝かせてもらおうか」
いそいそと布団に潜り込む。
右手が使えないことは不自由だ、改めて手錠で繋がれていることを思い出す。
「安心して寝ろ。俺がそばにいてやるから」
それが一番心配なのだが、月詠はこくりとうなずいた。
「おやすみ、銀時」
「ああ・・・おやすみ」
完
あとがき
これはこち亀ドラマの手錠ネタに触発されて書いた代物です。
それを銀さんと月詠に置き換えました。
ストーリーも展開も違いまくりですが一人萌えて燃えていました。
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