酔いの明星






「誰だこいつに酒を飲ませた奴はぁ!」


銀時は地上の飯屋まで月詠を案内したものの非常事態に陥っていた。
常連サービスとかで水が酒に切り替わっていたのだ。
案の定、月詠は一口で暴れん坊将軍と化した。


「わしの酒が飲めんのか〜アァ!?」


「あ、あの月詠さん、一人称変わってますよーってか人が変わってますよ?」

「だまらっしゃいクズがっ!わしが気前よく杓しちゃろうっつってんだよ!!」


「お、お願いします・・・(すでに並々だけども)」


月詠はにやりと不敵な笑みを浮かべ狂いまくった手元で酒を注がんとした。
だが一向に注がれる気配が無い。


「?あ、あれ?月詠さん?」


注がれる状態、つまり中腰のまま固まっている月詠の顔を恐る恐る覗き込む。


「スーーーzz」

「寝てんのかいっ!」


この体勢で寝るとは・・・まあ助かったけど。奇跡的にまだ暴力沙汰になってねーし。
てゆーかどーしよこの人、連れて帰るしかなくね?


「おばちゃーん、今回はツケで」


奥のオバハンが銀時を不機嫌そうに睨みつける。


「またかい。あんた前回もそんなこと言ってたじゃないか、なんか代わりに置いていきな」


不機嫌なババアには逆らわないようにしているので、へらへらと薄笑いを返した。


「そうだなーこの銀ちゃんの特性レア写真とか・・・」

「んなものいるかい。ちゃんとした物、そうだねそのキセルとか」

「こ、これは月詠の・・・」

「それ以外は受け付けないよ」

「う。仕方ねえ・・・絶対売るなよ後できちんと取り戻しに来るから」

「あんた次第さね」


しぶしぶ手渡した。
オバハンはそれを品定めするとにやっと笑った。


「あら、このキセルはいいもんだねえ」


上品な光沢を放つそのキセルはもちろん極上品だ。
それを手にとり舐めるように見ると悪代官のように口の端を上げた。


「一週間以内に全てのツケを払わなかったら容赦なくこれは売り飛ばすからね」



そう言い捨てるババアの口元が緩んでいるのを銀時は見逃さなかった。




月詠は万事屋で預かることになった。
眠った彼女をおぶって帰ると神楽がじとっとこっちを睨んだ。


「ついに変なことしたアルか」

「何でそんな疑わしい目で見るの。何もやってません!」

「銀さん、僕日輪さんに連絡しておきますね」


新八が手早く電話をかける。


「ツッキーは私の部屋(押入れ)に寝かせるアル。変な事すんじゃねーぞテンパ」

「・・・へいへい運びゃいいんでしょ運びゃ」


ぐっすりな月詠を抱えなおして神楽の部屋(押入れ)に向かう。
その背中に新八が叫んだ。


「銀さーん明日海に行くんですよ覚えてます?バスは朝早いですから寝坊しないでくださいよー」


手はふさがっていたので「おう」とやる気無く答える。


「遅れたら置いていくアル」