「あんのババアー・・・キセルが高額だとわかるといきなり手のひら返しやがって。
一週間以内に返せる金がありゃツケにするかっての」


ぶつくさ言いながら銀時は朝っぱらから外を散歩していた。
なにせあのキセルは月詠の物で、勝手に担保にしたのをどう弁解しようかと思い悩んでいたからだ。

もうみんな出発したか?
とため息混じりに万事屋に帰ると、月詠が壁にもたれて待ち伏せしていた。


「どこに行っておった銀時」


落ち着いた声だがどこか怒りが混じっているように感じた。


「あ、あのう・・・月詠ちゃんは新八と神楽とは一緒に行かなかったんですか?」

「あやつらはとっくに海の家とやらに行ったが、わっちはぬしを待っておった。キセルも見つからんしな」


ギクリと銀時は明後日の方角に目を向けた。


「あーたぶん神様が禁煙しろって言ってんじゃね」

「む・・・そうか」


あまり気に留めていない様子だったので、銀時は胸を撫で下ろす。


「俺らは愛車(スクーター)で行くぜ。おら、おまえのヘルメット、命が惜しけりゃかぶんな」


ぽいと投げられる。


「・・・これをかぶればいいんじゃな?」

「しっかりつかまっとけよー」


スクーターにまたがり、その後ろに恐る恐る乗り込む月詠をちらりと見た。


「つかまると言っても何もないではないか」

「ばか、俺の腰にがっちりみっちり手を回しゃいいんだよっ」


ぶるんとエンジンをかけるととたんにしがみついてきた。
本当にがっちりみっちりで、銀時が楽しげに口を上げる。


「おんやぁ?恐いのかな月詠ちゃんは」

「ば、ばかもん恐いわけあるか!わっちをからかうな!」

「ムキになるあたり怪しいねぇ・・・あだだだだ!」


しがみついていた腰をグイッとひねった。


「う、運転中はそゆことやめてよ〜事故るし」

「ぬし次第じゃ」

「腰につかまるぶんには大歓迎だけどな。・・・さ、しっかりつかまっとけよォ!」


スクーターが発進した。
言われたとおり腰にしがみつくが必然的に銀時の背中に顔を埋める形になる。

顔には出さないが、銀時は実に上機嫌だった。