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「待たせたの」
「まったく待ちくたび・・・」
言い返しかけて言葉を呑んだ。
てっきり黒い浴衣だろういつもとそう変わらないだろうと思っていたが、とんでもなく裏切られた。
なんと白い浴衣だったのだ。散りばめられた花柄がいかにも女らしい。
「おお可愛いアル!白ツッキーアル!」
「お似合いです月詠さん、ね、銀さん」
「ん?ま、まあな・・・」
銀時はふいと顔をそむける。
ふてくされていながら頬は赤かった。
「おい銀時、なぜ不機嫌なんじゃ。そんなに待たせたか?」
「べ、べつに不機嫌じゃねーし待ってもねーよ」
「こっちを向きなんし」
さっと手を伸ばしたがすんでのところでキャッチされた。
「!?」
「・・・俺にさわると怪我するぜ」
むしろそのセリフが大怪我だよ重症だよ!新八はため息をついた。
いつの時代の口説き文句だ。
「二人の逢引の邪魔をするほど無粋じゃないアル。行くネ新八」
「えっ」
男前神楽は新八の手を引っ張って早々と花火を見るための席へ向かった。
実はたまが席を先取りしているのだ。
お登勢とキャサリンも後から来る寸法だ。
二人っきりとなった銀時と月詠。
先に沈黙を破ったのは銀時だった。
「あー・・・まだ花火まで時間あるから夜店でも回るか?」
「そうじゃな、あっちにたしか金魚すくいがあったぞ」
「おまえにすくえるのは赤い奴だけだろうな。俺はデメキンとかすくっちゃうけどね」
「わっちもなめられたもんじゃな、勝負するか?」
腕まくりをする。
「いいぜー先に網が破れたほうが負けなソフトおごりな」
「望むところ」
二人の目から火花がほとばしった。
てゆーかまだ店にも着いていないのに闘志メラメラだ。
結局、敗者は偉そうな口を叩いていた銀時。
なんと一匹もすくうことなく網が破れた。
「こ、こーゆーこともあるある・・・」
「ソフトクリームをおごっくれるのじゃったな、わっちはチョコレートがよい」
「う・・・仕方ねえな夜店は高いんだぜー」
「言い出したのはぬしじゃ」
取り付く島もない。
ふっと笑う月詠の表情は普段の冷たい印象からは想像できないほど柔らかいものだった。
銀時は顔が赤くなるのを悟られまいと素早く立ち上がった。
「行くぞ、早く行かねーと行列ができちまう」
ぐいっと月詠の腕を引っ張る。
「え、わっちはまだ破れておらんし、まだ2匹しか・・・」
「2匹で十分だ。観賞用ならそのくらいにしとけ」
「そうか」
店のオヤジから金魚が入った袋を受け取り、銀時に引かれるまま店を出た。
手元の金魚らはただ優雅に泳いでいた。
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