「銀時どうしたんじゃ?そんなに急がんでもソフトクリームは逃げりゃしんせん」


片手をつかまれたまま後姿を見つめた。
ようやく止まる。
振り向いた顔は困ったように目を泳がせていた。


「銀時?」

「・・・なんでもねえ」

「なんでもよくないじゃろう。あ、もしかしてソフトクリームをおごる金が無いのか?
仕方ないな、わっちが買ってや・・・」


言いかけて止まった、いや遮られた。
突然、抱きしめられたのだ。
最初は何が起こったのかわからなかった。
だが、背中に回された腕と包まれている温もりにおのずと悟った。
徐々に顔が熱くなるのがわかる。


「・・・んなわけねーだろ夜店は高いっつったろ?そのくらいの金は用意してらぁ」

「な、なにを・・・離、さんか・・・」

「離して欲しいのか?」

「あ、あたりまえじゃ」


ふっと力が緩み月詠は開放された。
顔が赤くなっているはずなのでうつむいたまま手元の金魚を見つめる。
銀時はがしがしと頭をかいた。


「悪ぃ・・・まともな恋愛はしたことねえから、その、わかんねーんだよ。そうだな簡単に言えば、おまえが好きだってことだ」


それを聞いて驚いたように顔を上げると、銀時は決まり悪そうに目をそらした。


「いきなり抱きしめる奴があるか・・・でも、そうじゃな、わっちも好きなのだと思う」


困ったように微笑んだ。


「銀時、どうやらこれが世間一般で言う両想いという奴かもしれぬな」

「そっか・・・おまえもか。結構嬉しいもんだな両想いってのは」


銀時は下を向いていた月詠のあごをくいと持ち上げる。
遠くで花火が上がる音がした。


「空気読めよ・・・目を閉じろ」

「あ・・・」


言われるままに目を閉じた瞬間、唇が重なった。
固まる月詠の体をがっしりと包み込む。

長い行為は終わりゆっくりと離されたところで二発目の花火が上がった。


「・・・まだまだ上がると思うぜ。メインはなんとかの滝っつー海面も輝く仕掛け花火だ」

「それはすごい、是非近くで見たいものじゃ」

「ならさっさとソフト買ってババアの所に行こうぜ・・・その前にも一回チューしとく?」


にやりと笑う男にボディーブローをくらわす。


「ほざけ!わ、わっちらは花火を見に来たのじゃ!」

「げふ・・・おまえチューぐらいで殴んなよ・・・俺彼氏になったはずよ?てか花火大会は恋人たちの晴れ舞台よ?」

「知るか!は、早くソフトクリームを買いに行くでありんす!」


スタスタと先に行く月詠。


「チョコレートとイチゴを一つずつ。お代はあの男からもらってくれ」

「へい!」


勝手に注文している。
銀時はぼりぼりと頭をかきその出店へ歩き出した。





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