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中はひんやりと冷たかった。
「涼しいねぇ夏にもってこいの場所だな」
そんなことを言いながら月詠の手をがっしり握っていた。
「・・・おい銀時、ぬしまさか怖いのか?」
くわえタバコはいかんとオヤジにキセルを奪われご機嫌斜めな月詠が隣の冷や汗男を見やる。
「な、何が?怖いわけないじゃーん怖いわけないじゃーん」
「二度言うな」
その時、銀時の頬に冷たいものが触れた。
「ぎゃあああああ!!!」
飛び上がり抱きつく、月詠に。
「ただのコンニャクじゃあ!!しっかりしなんせ!!!」
はるか前方からキャーという新八の悲鳴とドカッバキッという破壊音が聞こえてきた。
「・・・器物損害罪で訴えられやしないか」
「し、心配しなくてもあれは新八が神楽にやられている音さ」
「それはそれで心配・・・てゆーかぬしが一番心配じゃ」
冷や汗男はまだ自分の肩をしっかりとつかんで背後で震えている。
「はあ仕方ないのう・・・ほれ、手をつないでやるから」
「助かっ・・・いやいやお前のためだかんな?お前が怖がらないよう銀さん手をつないであげるんだからね?」
「はいはい、何でもいいから進むでありんす」
差し伸べた左手を瞬く間に握られる。
「どさくさにまぎれてToLOVEるを起こさぬように」
「・・・そんな余裕ねーよ、第一3回目ともなると殺されかねん」
「自覚があったのじゃな」
「やるときは堂々とやる」
「・・・・・」
おかしな方向に話がいってしまったと月詠は一人赤面する。
「あれ、何赤くなってんの?もしかして思い出した?」
にやりとする銀時。
「た、たわけ。寄るなゲテモノ手を離せ」
手を振り払われたちまち銀時がうろたえ始める。
「あ!んな仕打ちあるか!お願い俺と繋がってて!!」
「妙な言い方をするな!」
再び手を握られる、というか腕をつかまれる。
「まったく・・・シリアスモードの時は男前なのにな」
なんとなく呟いた言葉を銀時は聞き逃さなかった。
「やっぱ俺ってカッコイイ?」
「・・・真面目なときは」
「そっかそっか。惚れちゃった?」
「また手を振り払われたいかゲテモノ」
「んな照れんなってーほれ、特別にちゅうーv」
腕を引き寄せられ顔の距離が近づく。
「ば!や、やめろぉぉぉぉぉl!!」
ジタバタするも丸腰な上男女の力の差はいなめない。
あっという間に唇を奪われてしまった。
「きさ・・・何する・・・」
一気に顔の熱が上昇する。
「もう女を捨てたとか言うんじゃねえぞ。今の顔、バリバリ女だったぜ」
「・・・ぬしに言われたくない」
「俺は文句のつけようがないほど男だって。あっちのほうは拗ねてるみたいだが」
最近使ってねーからなぁ、と付け加える。
「もうすぐ本領発揮できるぜ相棒」
自分の股間に話しかける銀時。
こっちをちらちら見るので気にさわる。
「おい、ここはお化け屋敷だぞ。怖がっていたではないか」
「俺が?こ、怖がってねーしもうすぐ出口だし?」
月詠をいきなり抱き寄せる。
「わ!」
あっという間に銀時の胸に収まる。
「俺がそばにいてやるから」
それはこっちのセリフだ、と冷静に思う月詠だった。
しかし初めて抱きしめられたのでドキドキしていたり。
その甘い雰囲気を壊すのはお化けだった。
「ぎゃあああああ!出たあああああ!!」
「ちょ・・・」
いきなり抱きしめられて慌てる。
「南無南無・・・てか月詠に手は出させんぞおおおお!」
眼を瞑りぶんぶんと木刀を振り回し、その行動にお化けがたじろぐ。
「た、たんまたんま兄さん・・・勘弁してくれよー痛いのは嫌なんだよー」
慌ててがぽっと着ぐるみを脱ぐ。
現れたのは高校生くらいの好青年で、銀時もおずおずと木刀をしまう。
「ども、バイトの黒木です。それにしてもまじで攻撃してきたのは兄さんが初めてだよ、みんな逃げるからね」
丁寧に謝罪され、引きつっている銀時を尻目に月詠は頭を下げる。
「こやつが悪いことをしたな」
「いやいや気にしないでください、なんとか避けましたから」
たはは、と頭をかく。
「おい銀時、ぬしも謝らんか」
「え?ああ・・・悪かったな」
「いえいえ。まだ先は長いですけどもう木刀は振り回さないでくださいね」
「大丈夫じゃ。わっちが預かる」
問答無用で銀時の腰から木刀を引き抜いた。
「きゃ〜月詠ちゃんのえっち〜」
「・・・貴様、怯えていたのはどこのどいつじゃ」
「何?俺が怯えるわけないし、逃げも隠れもしませんよ」
きっと月詠がいなかったら一目散に逃げていただろう。
『月詠に手は出させんぞお』と騒いでいたのを思い出し、ちょっと微笑む。