3
目的地の海に到着した。
先に来ていた神楽と新八はすでに沖に出ていた。
正確にはモリを携えて潜った神楽を新八がそわそわしながらボート上で見守っているという図だったが。
こちらにに気付いた新八がぶんぶんと大きく手を振り、
月詠もそれに軽く手を上げて答えた。
銀時はただだるそうに砂浜にシートを敷きパラソルを刺すとそこに寝転がる。
海にまで来て寝る男を月詠は呆れたように身ながら隣に腰を下ろした。
しばらく沈黙が続いたがやがて銀時が薄目を開けた。
「・・・おまえは別に泳いできてもいいんだぜ」
「ばかもの。急なことゆえわっちは水着を持っておらん」
「あ、そっか」
何を思ったのか、銀時がムクリと起き上がった。
いつ着替えたのか、自分はしっかり海パン姿だ。
「んじゃ買いに行くか、ここは海水浴場だ腐るほど売ってるはずだぜ」
「いや、わっちは別に・・・」
「遠慮すんな俺が買ってやるよ」
「な、なんじゃ珍しい」
「いやいや別に下心はありませんよ?(嘘)決して水着姿が見たいとかそんなんじゃありませんよ?(嘘)
・・・せっかく来たんだ、楽しめ」
キセルの罪悪感が銀時の重い腰を奮い起こした。
「いらっしゃいませー!」
ニコニコしたハイテンションな店員さんが迎えてくれた。
銀時はそそくさと男物水着の転売所へ行き、月詠は見事に女性店員につかまった。
「いらっしゃいませ、どのような物をお求めですか?」
「あ、いや、よくわからないんじゃ・・・」
するとその店員は月詠を見回し、一つの水着をあてがった。
「お綺麗ですからきっとなんでも似合いますわ!そうですねー今年流行のこのゼブラ柄が良いと思いますわ!」
「ゼブラ?何でも良い、それを貰おう」
「きっとそちらの彼氏もお喜びになりますわ!」
「え?ぎ、銀時!?」
振り向くとそこにはいつに間にか銀時が立っていた。
「よう、ちょっと心配になってな。あまり高いと銀さん死ぬよ」
「気にするな、もとよりぬしに頼る気はない」
「そのシマウマさんはいくらなわけ?」
「あのーこちらは2万6千円になりますわ」
笑顔な店員に銀時はよろめいた。
「ああ、まあそんなところか」
ひょいと財布から3万を取り出す月詠。
「・・・さすが死神太夫」
「なんじゃ、嫌味か?」
「いやいや褒めてんだって。
さっそく着替えたら?残念ながら個室あるみたいだし」
そういう銀時はすでに
浮き輪をかかえている。
「では、ここで着替えるとするか・・・借りるぞ店員殿」
「どうぞどうぞ!」
高い買い物をしたためか店員の機嫌が良い。
次のターゲット(客)を見つけ、にこやかに去って言った。
そうして個室に閉じこもり数分後、月詠が顔だけをカーテンの隙間から出した。
「何やってんのおまえ」
「・・・別に。こういうのが今の流行なのか」
カーテンを開けるとしまうまビキニ姿のセクシー月詠が現れた。
照れているのか頬が赤くそれもまた銀時には強い衝撃を与えた。
危うく浮き輪を取り落とすところだった。
「おまえやっぱ肌白いなぁ」
「たわけ!いいか、わっちを隠せ」
そう早口で言うと銀時の背中に身を隠した。
「うわ」
「これでよい」
「これでよい、じゃねえ。なんだその生殺し体勢、俺がぜんぜん見れないじゃん」
「見んでいい」
「あのなーずっと俺の後ろにいるわけにゃいかねーだろ。
ここは海だ!海といえば恥ずかしい格好をしてなんぼの場所だ!」
「こんな格好で人前に出れるか!」
「あー仕方ねえなー泳ぐの諦めてなんか食おう(俺がかなづちだともバレねーし)、
それならパラソルの下で座ってるだけだから問題ねえだろ」
しぶしぶOKを出したが銀時は無言で手を差し出した。
「?」
「手ぇつないでやる。そしたら誰もおまえをじろじろと見ようとはしねえさ」
「・・・うむ」
そっと手を握る。
別に並んで歩くだけでもいいのだが、そこが銀時の悪知恵の働くところだ。
しなやかな白い手を満足気に強く握り締めた。
前 次