旅館の部屋に着いた。

安い割りにちゃんとした部屋だ。
居間と寝室の2部屋があり、銀時と月詠は居間に腰を落ち着けた。
とゆーか銀時はいきなり畳に寝転がった。


「おい、この塩アイスとやらは溶けるのではないか?」

「まあ溶けるわなーアイスだし」

「早く食さねば飲み物になってしまうぞ」

「・・・」


じっと見上げられて月詠はなんとなく焦った。


「な、なんじゃその目は」

「んーーー食・べ・さ・せ・てv」

「ば、ばかもの!ぬしの冗談には付き合いきれぬ!」

「あれ、こーゆーの慣れっこじゃねえの?なにせ遊郭にいたわけだし」

「わっちは護衛担当じゃ、生まれてこの方武道一筋、店になど出たことはない」


(それでこんなにもピュア子ちゃんなのか・・・)
銀時は全てを悟った気がした。


「いいぜ。銀さんがあんなことやこんなことを丁寧に教えてあげ・・・ぐはあっ」


言い終わる前に素早い鉄拳が飛んできた。


「せっかく食べさせてやろうと思うたのにの」

「あ、嘘、嘘、お願いします月詠太夫〜」


月詠は結局、ため息をつきつつもスプーンにアイスをひとすくいし銀時の口に運んでやる。


「まったく仕方のない男じゃ。物事には順序という物があるじゃろうに」


その発言に銀時は盛大にアイスを吹く。


「ぎゃあ!な、何をしておる!?」

「げふ・・・わりぃわりぃ、え・・・順序と言いますと?」

「まず互いの気持ちを確かめ合ったのち、じゃ。何事も最初が肝心じゃ」

「・・・なんだびっくりした・・・で、そんだけ?」

「まあ、うわっ」


いきなり腕が伸びてきて気付けば月詠までもが寝転がされていた
しかも銀時との距離が近い、言うなれば覆いかぶさっている状態だ。


「・・・俺はおまえが好きだぜ」

「え?」

「おまえはどうなんだ、俺のこと、嫌いか?」


真剣な眼差しに思わず目をそらしかけたが男の手がそれを許さなかった。


「どうなんだ?」

「そ、それは・・・」

「ん?」

「・・・・・・好きじゃ」


消え入りそうな小さな声だったが銀時は聞き逃さなかった。
満足そうに微笑む。


「これでおまえの規定には合格できたわけだ。だが俺の規定はこんな生ぬるくないぜ」


押し倒した状態で見つめ合う。


「俺だって男だ、わかるかこの意味」

「・・・ああ」

「いいか?」

「・・・・・・ああ」


ゆっくりと目を閉じる月詠。
唇を重ねると広がるのはアイスの味。
そのまま水着に手を掛けると、勢い良く入り口の扉が開かれた。
新八の声が響きわたる。


「銀さーん月詠さーんどこに・・・」


がらりと居間のふすまを開けると、
窓際で外を眺める不自然極まりない男と、カップアイスを口に運ぶ乱れ髪の月詠の姿が目に飛び込んできた。


「・・・」

「あ、あれ新八ぃーお早いお帰りで・・・か、神楽は一緒じゃないのか?」

「神楽ちゃんももうすぐ来ますよ。てゆーか何してんですか銀さん」

「え、日光浴?的な?」

「・・・あのーここガチで海なんですけど」


このバカ!と月詠は銀時を睨んだ。


「ただいまアル〜銀ちゃんしっかり獣になったアルかー?」


神楽の明るい声が飛んできて月詠はぶっとアイスを吹いた。
新八も危うく眼鏡が割れかける。


「な、何言っちゃってんの神楽ちゃん!?
こんな所でいかがわしいことするほど銀さんもバカじゃないでしょう、ねえ銀さ・・・」

「・・・」


窓際の男は冷や汗だらだらで外を向いていた。
新八はこいつならやりかねん、と月詠の乱れた髪を見て一人悟った。
なかなか鋭いのだ他人事は。


「・・・まじですか、ヤッちゃいました?」

「未遂だ」


爽やかに言い放つ月詠。
銀時がガクッと肩を落としたことは言うまでもない。


「さすがに俺も子供の前でそんなことしないから、良識あるから」


そうか?と疑いのまなざしを向ける月詠の視線から目をそらす。


「なんだダメガネのせいで未遂アルかー残念だったネ銀ちゃん」

「神楽ちゃんボク新八!ダメガネって呼ぶなあ!!」


わいわいと賑やかだ。
こんな感じは今まで味わったことがないが結構楽しいものだ。
月詠は微笑んだ。

乱れた髪を解きくしでといていると、銀時が溶けかけたアイスを食べようと戻ってきた。
放って置くと神楽に食べられるからだ。